2016年08月
患者さんに追われて大変忙しい日々の中で、常に研究心を持ち続け、新しい情報を世界に向けて発信することは非常に素晴らしいことです。
この度、おんが病院の循環器科部長の吉田哲郎先生が「30代で3度の脳血管障害を発症した重症閉塞型睡眠時無呼吸の症例」をJAmSocHypertensの2016年3月号に報告され、若年にも発症しうる脳血管障害の新しい概念を提唱されました。
症例は、37才男性で、これまでに、いずれも睡眠中に3回も脳血管障害を発症しています。そこで、その原因を調べると、血液の一般検査や心電図、診察室血圧は正常でしたが、以前より日中の眠気が強く、いびきがひどいとのことでした。
終夜パルスオキシメーターにてスクリーニングしたところ、睡眠時無呼吸症候群が疑われ、終夜睡眠ポリグラフを施行し、無呼吸低呼吸指数は75.5(正常値0~4)と最重症の睡眠時無呼吸症候群であり、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)は53%(正常値95%以上)まで低下しており、低酸素をトリガーに測定する血圧計を用いますと、この時の収縮期血圧は200前後まで上昇していました。
外来での血圧は正常ですが、就眠中に、突然、激しい頭痛を発症し、毎回、救急搬送されています。
32才時のラクナ梗塞も高血圧が誘因と考えられており、若年者で、脳血管障害を繰り返す原因が、重症睡眠時無呼吸に起因する高血圧であることを突き止めた報告はこれまでにありません。そこで、若年者の重症睡眠時無呼吸⇒低酸素血症⇒血圧サージ⇒脳血管障害という、重症睡眠時無呼吸に起因する一連の病態を「Tetsuro症候群」と私は勝手に名付けました。
一般の病院では、最先端の研究に使う機器が揃っていませんので、研究を推し進めるには大変不利な環境ですが、このようにresearchmindを持って日常の診療に当って頂いていることを大変嬉しく思っています。
また、末廣副院長と共に熊本のオオクマ電子(株)と共同開発しているSPASERに関して、文部科学省の研究費を3年間で1億円頂きましたので、これから更に、「如何にして無駄を省き、病院の経営を安定させていくか」などについての研究も精力的にやっていきたいと考えています。