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図1:平均寿命の推移
図2:2001-2019 男女別 健康寿命と平均寿命の推移
近年、日本では平均寿命が延び、世界有数の長寿社会を迎えています。(図1)しかし、日常生活を自立して送ることのできる期間である「健康寿命」と平均寿命との間には依然として差があり、この差をいかに縮めていくかが重要な課題となっています。(図2)高齢化の進行に伴い、排尿に関する悩みや障害を抱える方は増加しており、生活の質(QOL)を維持・向上させるうえで、排尿機能の管理はますます重要になっています。
排尿障害は、頻尿、夜間頻尿、尿失禁、排尿困難、残尿感などさまざまな症状として現れます。これらの症状は命に直接関わるものではないと思われがちですが、睡眠の質の低下や外出機会の減少、転倒のリスク増加などを通じて、日常生活に大きな影響を及ぼします。排尿障害の改善は、健康寿命の延伸や自立した生活の維持に直結する重要な医療課題であり、泌尿器科の役割は今後さらに高まっていくと考えられます。
図3:下部尿路障害治療剤
泌尿器科は、腎臓、尿管、膀胱、前立腺などの尿路系疾患を専門的に診療する診療科であり、1990年代以降の約30年間で、排尿障害に対する治療は大きく進歩してきました。頻尿や過活動膀胱に対する治療薬として、抗コリン薬やβ3受容体作動薬など新しい作用機序を持つ薬剤が開発され、多くの患者さんの症状改善に寄与してきました。また、前立腺肥大症に対してもα1遮断薬や5α還元酵素阻害薬などの薬物療法が普及し、手術に頼らず症状をコントロールできる患者さんが増えています。(図3)、さらに薬物療法だけではなく 生活指導や排尿指導、内視鏡手術など幅広い治療を提供できることが特徴です。地域においては、排尿に関する不安や困りごとを気軽に相談できる身近な診療科として、早期診断と適切な治療を行い、患者さんの生活を支える役割を担っています。
図4:前立腺肥大症の治療
図5:経尿道的前立腺吊り上げ術
特に男性高齢者に多くみられる前立腺肥大症は、排尿障害の代表的な疾患の一つです。加齢に伴い前立腺が大きくなることで尿道が圧迫され、尿の勢いが弱くなる、排尿に時間がかかる、夜間に何度もトイレに起きるといった症状がみられます。症状が進行すると尿が出なくなる尿閉や腎機能への影響を引き起こすこともあり、早期の対応が重要です。
治療法としては薬物療法を基本としながら、症状や生活背景に応じて手術療法も行われてきました(図4)。その一つが「経尿道的前立腺吊り上げ術」で当院でも可能な治療法です。(図5)この治療は、内視鏡を用いて前立腺を糸状のインプラントで持ち上げ、尿道の通り道を広げる方法であり、前立腺を切除しない低侵襲治療として注目されています。身体への負担が比較的少なく、出血が少ないこと、回復が早いことなどが特徴であり、高齢の方や合併症をお持ちの方にとっても選択肢となり得る治療法です。
私たちは、泌尿器科の専門性を活かし、排尿に関するさまざまな悩みに丁寧に対応しながら、患者さん一人ひとりに適した治療を提供することを心がけています。地域の医療機関や介護施設との連携を大切にし、安心して生活を続けられる地域づくりに貢献していきたいと考えています。今後も、排尿機能の維持と改善を通じて健康寿命の延伸に寄与し、地域医療の一端を担ってまいります。